第4章
山崎県立高校。
十六歳の私は、不安とぎこちなさの塊で、本を鎧のように抱きしめていた。古着屋で買った服と、マーカーで落書きだらけの靴。そんな私は格好の餌食だった。他の生徒たちは、私のことなど気にも留めないくせに、たまに気づけば「掃き溜め育ち」と蔑んだ。
良平は、気づいてくれた。
二十歳、二度も留年した最上級生。だけど、直球が銃弾のように速い彼を、誰も気にしなかった。身長は百八十八センチ、砂色の髪に、女の子たちをくすくす笑わせるあの悪戯っぽい笑顔。
田中隆から私を救ってくれて三ヶ月、良平は私の守護者になっていた。不良にロッカー脇で追い詰められた時も、良平はまるで救いの神様のように現れた。
彼は言った。「佳奈ちゃんに手を出すやつは、俺が許さねえ」
不良は引き下がった。山田郡では、佐藤という名前には重みがあった。
私は目を輝かせて良平を見上げた。「ありがとう、良平くん。あなたがいなかったら、どうなっていたか……」
彼は私の肩に腕を回した。男の人に触れられても、初めて体がこわばらなかった。
彼は応えた。「そんなこと、考える必要はないさ、佳奈ちゃん。俺がずっと、君を守ってやるよ」
ずっと。あの時は約束のように聞こえたその言葉が、今では脅迫に聞こえる。
あの年、春。山崎県立高校の卒業パーティー。
ミラーボールがダンスフロアに光の破片を投げかける。私は自分でリメイクした、古着屋のピンクのドレスを着ていた。
良平は私を見ると、クリスマスの朝の子供みたいに顔を輝かせた。
彼は言った。「今夜、ここで一番きれいなのは君だ、佳奈。いや、この町で一番だ」
褒められることに慣れていなくて、私は俯いた。「あなたみたいな人が、私みたいなのに気づいてくれるなんて思わなかった」
良平は私の顎を持ち上げた。「佳奈、君は『みたいな』なんかじゃない。君は俺のすべてだ」
彼が最優秀卒業生に選ばれると、学校中が沸いた。良平はみんなの期待の星で、未来の警察署長。そしてどういうわけか、ありえないことに、彼は私を選んでくれた。
私たちは音楽に合わせて踊り、私はシンデレラになった気分だった。その後、星空の下で、良平は初めて私にキスをした。田中隆の暴力的なそれとは全く違う、柔らかくて優しいキスだった。
「愛してる、佳奈」と彼は囁いた。
「私も愛してる」と私は囁き返した。心の傷ついた欠片すべてで、本気でそう思っていた。
桜島大学キャンパス。
看護学校は、私にとっての脱出計画だった。良平は二時間離れた警察学校にいたけれど、毎週金曜日になると、彼の使い古されて見た目が悪くなっている車が駐車場に現れた。
ルームメイトの山本早紀は感心しきりだった。「佳奈ってほんとラッキーだよね!佐藤さん、あなたに会うためだけに毎週二時間も運転してくるなんて!」
私は誇らしげに微笑んだ。「私がその価値があるって言ってくれるの」
良平はガソリンスタンドで買ったデイジーを持ってきてくれたけど、それはまるで薔薇の花束のようだった。
ある晩、彼の車でマクドナルドを分け合っていると、彼はベルベットの箱を取り出した。「婚約指輪じゃない。まだな。でも、これを君に持っていてほしくて」
ハートのペンダントがついた、繊細な銀のネックレスだった。彫り込まれた文字は『俺の佳奈』
「佳奈が卒業したら、結婚するんだ」彼は私の首にそれを留めながら言った。「全部、俺が計画してる」
私はペンダントに触れ、その重みを感じた。『俺の佳奈』それが、自分の居場所を見つけたような感覚だった。
山田郡地元の神社。
私たちの結婚式は、田舎町の女の子が夢見るすべてだった。神社には郡内の人々が大勢集まっていた――地元の期待の星である彼が、かつて救った少女と結ばれるのを見るために。
私は白無垢に角隠し姿で参進の儀に臨んだ。良平は紋付袴姿で神前に待っていた。
視線が合うと、彼はあの悪戯っぽい笑顔を見せ、私は世界で一番幸運な女だと感じた。
神主の永井さんの導きで、私たちは三三九度の杯を交わした。続いて誓詞奏上の儀で、良平は力強く、確かな声で誓いの言葉を読み上げた。
「私、佐藤良平は、小野佳奈を妻と定め、互いに敬い、睦み合い、生涯変わらぬ愛情を持って添い遂げることを、ここに誓います」
私も同じように誓詞を奏上したが、感極まって声が震えた。「私、小野佳奈は、佐藤良平を夫と定め、互いに敬い、睦み合い、生涯変わらぬ愛情を持って添い遂げることを、ここに誓います。良平さんが私を救ってくれた恩を、一生忘れません」
玉串奉奠の儀を終え、輝かしい一瞬、私はもう孤独な身の上ではなかった。私は佐藤良平の妻となり、山田郡で最も尊敬される家族の一員になったのだ。
初めてのアパート。
最初の数ヶ月は、おとぎ話のように完璧だった。良平は花束を持って帰り、私は彼の好きな料理を作った。デスクライトの落ち着いた光で食事をし、将来について語り合った――買う家のこと、生まれてくる子供たちのこと。
「佳奈、ただいま!いい匂いだね!」
「生姜焼きを作ったわ。今日一日どうだった?」
「きれいな奥さんのいる家に帰ってこれたから、今は最高だよ」
週末は公園でピクニックをした。私が看護学の専門誌を読んでいる間、良平は近くの子供たちと遊んでいた。私たちは若く、恋に落ちていて、目の前には全世界が広がっていた。
そして、最初の亀裂。
私は桜島で開かれる高度外傷看護のパンフレットを手に取った。週末だけのセミナーだったが、私のキャリアの助けになるはずだった。
私は言った。「良平さん、これ見て!桜島で高度外傷のコースがあるの。すごく役に立つと思う――」
しかし、良平の顔つきが変わった。彼の目から、次第に温もりが消えていくのを感じた。
彼は尋ねた。「なんでそんなものが必要なんだ?君には山崎県立病院で十分だろ」
私は答えた。「でも、良平さん、私はできる限り最高の看護師になりたいの……」
「俺じゃ不満だって言うのか?この町じゃ足りないって?」彼の声が低く、危険な響きを帯びた。
「考えが甘かったな」彼はパンフレットを掴むと、真っ二つに引き裂いた。「よそ者に余計な知恵をつけられる必要はない」
それから彼の顔が歪んだ。「ごめん、佳奈。ただ、君を失うなんて、考えただけで耐えられないんだ」
そして、若くて、傷ついていて、おとぎ話を信じたくて必死だった私は、彼の嫉妬が本当の愛なのだと、自分に言い聞かせることを許してしまった。
それが、あの瞬間だった。檻の扉がカチリと閉まる音がした、最初の瞬間。
現在。
私は目を閉じ、記憶を押しやろうとした。
あの頃の良平はもう死んだ。初めて私を殴ったあの日に。私はずっと亡霊を悼んでいたのだ。
もしかしたら、あの優しい少年なんて最初から存在しなかったのかもしれない。救世主を求めるあまりに、私が彼を創り上げ、最初に優しさを見せてくれた人間に幻想を投影していただけなのかもしれない。
彼は田中隆から私を救ったんじゃない。ただ彼に取って代わっただけ。より賢く、より辛抱強く。でも結果は同じ。
私は彼の腕の下からそっと抜け出し、化粧台へと足音を忍ばせて歩いた。鏡の中で、月明かりが今の私の姿を照らし出す――片目には傷跡が残り、指は何本か失われ、体は痣だらけになっている。
宝石箱を開け、あのネックレスを取り出した。
『俺の佳奈』
私は自分に言い聞かせた。私はあなたのものなんかじゃなかった、良平。ただ、まだそれに気づいていなかっただけ。
良平が寝言を呟き、所有欲に満ちた手を伸ばしてくる。でも、私は彼の葬式の計画を立てていた。






