第8章

赤と青のライトが闇を切り裂く。

サイレンが楓通りに鳴り響いていた。私は隅に座り、ドレスには血が、腕には引っ掻き傷。完璧な被害者だ。

ようやく。哀れな未亡人を救うため、警察のお出ましだ。

木村巡査がドアを蹴破って入ってきた。彼の懐中電灯が最初に捉えたのは、良平の体だった。

「なんてことだ。誰かが良平さんを殺したぞ」

私は声を震わせた。「彼が押し入ってきて……良平が止めようとしたんです……」

練習した通りに。

青井巡査が部屋を見渡す。こじ開けられた裏口。散乱した金目の物。

「物盗りがこじれた事件のようだな」

まさに、そう思ってほしかった。

救急救命士の佐々木...

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