第7章

十一月初旬、コンゴ東部で疫病が発生した。

もとより不安定なこの土地は今、死神の暗雲に覆われている。

難民キャンプでは毎日誰かが倒れ、恐怖はウイルスよりも速く伝播していった。

「里奈、君はもうここに来るべきじゃない」

治療センターの入り口で、海斗が私を呼び止めた。彼は分厚い防護服に身を包み、ゴーグルの奥から疲弊しきった眼差しだけが見える。

「私はジャーナリストよ。これが私の仕事」

私はカメラの防護カバーを調整しながら言った。

「それに、あなたがいいなら、私がダメな理由はないでしょう?」

「違うんだ、里奈」

彼の声は防護マスク越しにくぐもっている。

「昨日、さらに...

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