第6章

また、彼がやって来た。

京都駅のプラットホーム。新幹線から降り立つ鈴木景野の姿が目に入る。手にはブリーフケース、スーツの上着を無造作に腕にかけている。三日前、「東京で重要な会議がある」と言って発ったばかりだというのに。

今、彼は私の目の前に立っている。

「雪穂」

私は無視して、改札口へと背を向けた。彼は早足で追いかけてくる。

「説明させてくれ——」

「結構です」

私はICカードを改札にタッチして通り抜ける。

「鈴木さん、私たちはもう離婚したのよ」

彼が私の手首を掴んだ。強くはないが、足を止めるには十分な力だった。

「中村明日香を捨てた」

私は振り返り、彼を...

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