継承権を諦めたら、夫に浮気された

継承権を諦めたら、夫に浮気された

渡り雨 · 完結 · 20.4k 文字

503
トレンド
13.7k
閲覧数
780
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

チャリティーガラで、鈴木景野が大勢の前で愛人に一千万円のカルティエのネックレスを贈った。

フラッシュが激しく光り、皆が鈴木夫人である私の醜態を見物している。

東京の上流社会では皆こう囁いている。

「山田家のお嬢様が愛のためにお嫁入りされたのに、鈴木家を出られるはずがない」

誰も覚えていない。八年前、世紀の結婚式と呼ばれたあの日、鈴木景野が皆にどう私を紹介したかを。

「こちら妻の雪穂です。生涯をかけて守り抜く、私の最愛の人です」

誰もが思っていた。私がいつものようにお金で記事を揉み消すと。

景野の浮気を見て見ぬふりをし続け、表面だけは華やかな名門の結婚生活を維持すると。

しかし今回、私はただ鈴木会長の書斎の扉を開けただけだった。

「会長、三年の約束の期限が参りました。鈴木家から出させていただきたく存じます」

チャプター 1

 東京中の女の子は皆、鈴木景野が大好きだ。

 彼は付き合う女が多く、相手は毎週のように変わる。そのうえ羽振りが良く、必ずプレゼントを贈るからだ。

 宝石、バッグ、ドレス。そのどれもが桁違いに高価なものばかりだ。

 支払いがその場でなされなくても構わない。請求書を鈴木夫人に送りつければ、彼女がすべて決済してくれるのだから。

 帰宅するや否や、携帯が鳴った。

 帝国ホテルのチャリティー晩餐会の担当者だ。慇懃無礼な口調で、支払いは当然という態度が滲み出ていた。

「鈴木奥様でいらっしゃいますね。本日、ご主人様が落札なさいましたカルティエのネックレス、一千万円の件でございますが……恐れ入りますが、お支払いの手続きをお願いできますでしょうか」

 電話を切ると、今度は秘書からメッセージが立て続けに届く。

 銀座の宝飾店、六本木のクラブ、表参道のオートクチュール。ずらりと並んだ請求書の山はすべて、今月一ヶ月分の鈴木景野の散財の記録だ。

 六本木ヒルズの最上階。私は別邸の窓辺に立ち、東京の夜景を見下ろした。

 眼下に広がる街の灯りは、まるで無数の砕けたダイヤモンドを夜空に撒き散らしたかのように煌めいている。

 今夜、帝国ホテルで開かれたチャリティーオークション。鈴木景野は予告もなく現れ、名もなき三流モデルのためにパドルを挙げたらしい。

 カルティエのネックレス、一千万円。

 大勢の人の前、彼は自らの手で彼女の首にそれをかけ、まるで宝物でも扱うかのように優しく触れたという。

 カメラのフラッシュを浴びながら、彼はレンズに向かって笑って手を振ったそうだ。

「写真はいいけど、支払いは妻に回してくれよ。俺に請求書を送るなよ」

 会場は笑いに包まれたとか。

 ある令嬢が近づこうとすると、彼はわざとらしく体を逸らし、隣のモデルの腰を抱き寄せたらしい。

「今夜は、この子のために来たんだ」

 使用人が夕食を運んでくる。私はダイニングテーブルについた。

 視線がふと、壁にかかった油絵に吸い寄せられる。

 バルセロナのサグラダ・ファミリア。七年前、鈴木景野が街角の絵描きの老人にあつらえさせたものだ。「俺たちの影を、この街に残そう」なんて言って。

 今や額縁だけが立派で、絵の具はすっかり色褪せ、私たちの輪郭さえぼやけてしまっている。

 私と景野は19歳の時にフランスで恋に落ち、23歳で結婚した。だが遡れば、私たちは幼馴染だった。

 鈴木家と私の実家は、かつては親密な付き合いがあった。私と鈴木景野は幼い頃から共に育った仲だ。

 けれど私たちが成長するにつれ、ビジネス上のトラブルで両家は決裂した。実家は大阪へ移り、絶縁状態となった。

 ビジネスの場では犬猿の仲だった。プロジェクトを奪い合い、リソースを潰し合い、互いを踏みつけにするような関係だった。

 17歳で私がフランスへ留学した時、鈴木景野は家業を継ぐ準備に入ると聞いていた。

 まさか家族に内緒で、こっそり追いかけてくるなんて思いもしなかったけれど。

 一文無しの彼は、日雇いのバイトをしながら私に付き添った。最上階のボロアパートに住み、一番安いパンにかじりつく日々。

 当時の彼は、顔が良いこと以外はすべてが惨めだった。

 それでも周囲は私を羨んだ。「鈴木財閥の御曹司が、家を捨ててまで君を追ってきたなんて」と。

 渡仏二年目、彼は私に想いを告げた。

 セーヌ川のほとりで、彼は言った。

「子供の頃からずっと、俺が欲しいのは君だけだ」

 数年の間、喧嘩もしたし、泥沼のような騒ぎもあったが、私たちは互いを愛し合っていた。私の心は開いたり閉じたりを繰り返した。

 23歳の時、幾多の波乱を乗り越えて、私は鈴木景野の妻になった。

 その結婚式は世間を騒がせた。今でも当時の雑誌を探せば記事が見つかるだろう。

 ある夕刊紙が読者の注目を集めようと、大手新聞よりもセンセーショナルで大げさな見出しを付けたことがあった。あまりに下品な記事だった。

 翌朝、その記事を見た鈴木景野は、黙って読み終えると、新聞の上に水の入ったコップをドンと置いた。

 私が知った時には、その号がその三流出版社の最終号となった。

 過去を一つ一つ数え上げれば、私と鈴木景野があれほど深く愛し合っていたことに気づかされる。

 なのになぜ、今となってはあの色褪せた絵画のように、かつての面影さえ見えなくなってしまったのだろう。

 静まり返った広間。エレベーターの表示板の数字が変わり、三階で止まる。ドアが開いた。

 鈴木景野が姿を現す。ジャケットを腕にかけ、ダウンライトに照らされた顔立ちは相変わらず整っている。

 私は一瞥しただけで、すぐに視線をテーブルの料理に戻した。

 やがて、ソファに衣服が放り投げられる音がした。

 続いて、強いコロンの香りと男の体温が圧し掛かってくる。

 鈴木景野は私の背後に立ち、テーブルの縁に両手をついて、私を腕の中に閉じ込めるような体勢をとった。

 彼はテーブルの上のスマホを拾い上げ、秘書からの請求リストを覗き込む。

「銀座、六本木、表参道……今月は派手にやったな」

 気だるげな口調で彼は言う。

「鈴木夫人はご苦労なこった。また俺の尻拭いか」

 私は箸を置き、背筋を伸ばしたまま、彼の胸板とは常に距離を保つ。

 彼の軽口には取り合わず、私は別の話題を切り出した。

「中村明日香を広報部のチーフに据える件ですが、承認できません。彼女の履歴書は差し戻します」

 その名が出た瞬間、鈴木景野は弾かれたように体を起こした。私を包んでいた気配が霧散する。

 彼は向かいの席に座り、椅子の背に腕を回して窓外の夜景に目をやった。

「彼女のことは、君が口出しすることじゃない」

「それとも——」

 彼は視線を戻し、顎をしゃくって私を見た。

「彼女が気に入らないとでも?」

 私は彼の瞳を見つめ、そこに何かを探そうとしたが、何も見つからなかった。

 世間は鈴木景野がこの二年、女遊びが激しいと思っているが、それが中村明日香を守るための隠れ蓑だと知る者はいない。

 彼は二年前に彼女を海外へ留学させ、箔をつけさせて帰国させるやいなや、グループの幹部にねじ込もうとしている。

 私は彼女を敵視しているわけではない。ただの道理だ。

 鈴木財閥の採用基準は厳しい。第一学位は世界ランク30位以内の大学でなければならない。

 中村明日香は高卒で、18歳の頃はデパートでバイトをしていた。留学先といっても名ばかりの三流大学だ。どう贔屓目に見ても、幹部登用など説明がつかない。

 私は淡々と言った。

「仕事の話をしているのです。私情は挟んでいません」

 鈴木景野は黙っていたが、やがて彼のスマホから音声メッセージが流れた。

 とろけるような甘ったるい声だ。

「景野、今夜のネックレス、本当に素敵……ずっと着けていたい。ずっとあなたのそばにいたいの」

 わざと音量を上げたのか、私の耳には反響して聞こえるほどだった。

 鈴木景野は私を見据えたまま、スマホを口元に寄せ、気だるげに吹き込んだ。

「次はもっといいのをやるよ」

 私は彼の冷ややかな表情を眺めながら、かつて彼が私を愛していた頃の姿を思い出そうとしていた。

最新チャプター

おすすめ 😍

長年の結婚生活を終わらせたら、夫と息子が泣きついてきた

長年の結婚生活を終わらせたら、夫と息子が泣きついてきた

13.4k 閲覧数 · 連載中 · 白石 茉鈴​
長年の婚姻生活の中で、夫と息子の目に映る私は、ただの「最大の恥」でしかなかった。

あの女のために、何度も私を置き去りにした二人。そして今回の件で、私はようやく完全に目が覚めた。

彼らは、私の愛を受け取るに値しない。

だから私は、正式に離婚協議書を差し出した。
すると、あろうことかこの二人は、声を揃えてこう言ったのだ。
――本当に深く愛していたのは、私の方だった、と。

ふん、今さら一体、何の真似のつもりかしら。
元恋人の叔父に拾われた夜、私は彼という名の「毒」に溺れる

元恋人の叔父に拾われた夜、私は彼という名の「毒」に溺れる

10.9k 閲覧数 · 連載中 · 南宮
元恋人に裏切られ、冷たい玄関先で殺意を向けられたあの日。
私を見捨てた男ではなく、彼が一番恐れていた「危険な叔父」が、暗闇から現れた。
その腕の中だけが、この二年で初めて私を孤独から救い出した。
「次、誰かが君を傷つけたら、こうするんだ」 渡された銃の重みが、私の心に深く刻まれる。
私は逃げ出したかったはずなのに、いま、彼の甘い視線から離れられずにいる。 救いなどいらない。
ただ、この危険な男の「所有物」になりたい。
追放された偽令嬢、実は超財閥の真の令嬢

追放された偽令嬢、実は超財閥の真の令嬢

280.3k 閲覧数 · 完結 · あざ鳥
「お前みたいな偽物の令嬢、さっさと山奥に帰れ!」

孤児だと判明した途端、彼女は養父母から冷酷に家を追い出され、婚約者も本物の令嬢へと乗り換えた。
彼らは、彼女がこれからド田舎で悲惨な生活を送るのだとあざ笑っていた。

しかし、彼女を迎えに来た実の家族は、なんと世界を牛耳る超巨大財閥の一族だった!
さらに、彼女自身もただの小娘ではない。その正体は、世界の医学界が平伏す伝説の天才医師だったのだ。

実家に戻るや否や、彼女は神業のようなメス捌きで次々と難病患者を救い、医療界の権威たちを圧倒していく。その圧倒的な実力に、誰もが恐れる冷酷なトップ御曹司でさえも彼女に惹かれ、無限額のブラックカードを差し出す始末。

一方、彼女を追い出した養父母の家業は倒産寸前に陥り、元婚約者も彼女の本当の姿を知って絶望の淵に立たされていた。
彼らが泣きついて許しを乞うても、彼女は冷たく言い放つ。

「今さら後悔しても、もう遅いわ」
私が去った日

私が去った日

13.3k 閲覧数 · 連載中 · バラへの愛
七年間、私は完璧な妻を演じ続けてきた。

けれど最後に彼が選んだのは、私ではなく、彼の初恋の女性だった。

夫は、私の心を深く傷つけただけではない。あの女が私の大切なジュエリーデザインを盗むことを許し、さらには実の息子までも操って、私を「怪物」だと思わせた。

嘘で塗り固められた結婚生活の中で、私は少しずつ自分を失っていった。

息が詰まるような日々。愛されていると思い込んでいた時間。すべてが偽りだった。

けれど、彼らはひとつだけ間違えた。

私を、もう戻れないところまで追い詰めたこと。

私が去ると決めたあの日。

私は、最低な夫も、母親への感謝を忘れた息子も、そして彼らによって壊された過去の自分も、すべて置き去りにした。

親友の支え。そして、私の本当の価値を見抜き、才能を認めてくれたある若き実業家との出会い。

その温かな手によって、私はもう一度、自分自身を取り戻した。

失った誇りを取り戻し、眠っていた才能を開花させ、世界へ羽ばたくデザイナーとして新たな人生を歩み始めた。

今、私の作品は世界の舞台で輝いている。

一方で、かつて私を捨てた男は、跪いて許しを乞う。

「戻ってきてくれ」と。

けれど、もう遅い。

私が去ったあの日こそが、私が本当の自分を取り戻した日。

もう二度と、過去には戻らない。
不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

5m 閲覧数 · 完結 · 七海
初恋から結婚まで、片時も離れなかった私たち。
しかし結婚7年目、夫は秘書との不倫に溺れた。

私の誕生日に愛人と旅行に行き、結婚記念日にはあろうことか、私たちの寝室で彼女を抱いた夫。
心が壊れた私は、彼を騙して離婚届にサインをさせた。

「どうせ俺から離れられないだろう」
そう高をくくっていた夫の顔に、受理された離婚届を叩きつける。

「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」

初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。

「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
「良き元カレというのは、死人のように静かなものだよ?」

「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。

「それは無理だね」
私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」
追放された私が真の継承者だった件。今さら戻れと言われても、もう手遅れです

追放された私が真の継承者だった件。今さら戻れと言われても、もう手遅れです

140.8k 閲覧数 · 連載中 · 星埜雪奈
家族に捨てられ、私はようやく偽りの温もりを切り捨てた。
けれど、私の本質を隠し通すことは誰にもできない。
隠された私の正体は、この国で最も裕福な一族の継承者。
かつての家族が私を見失っている間に、私は全ての支配者となり、この街の頂点に君臨する男の視線を独占する。
彼が私に捧げる愛は、ただの寵愛ではない――世界を敵に回してでも守り抜く、狂おしいまでの執着だ。
極品の入り婿

極品の入り婿

3.8k 閲覧数 · 連載中 · 佐藤製作所
彼が財産を相続して戻ってきた時、かつて彼を見下していた人々は彼の前にひざまずくしかなかった。
妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

607.8k 閲覧数 · 連載中 · 蛙坂下道
鈴木七海は、中村健に好きな人がいることをずっと知っていた。それでも、彼との結婚を選んだ。
しかし、結婚して5年後、彼は離婚を切り出した。その時初めて、彼の想い人が私の父の隠し子(私の異母兄弟)だと知った。
離婚を決意した七海だったが、その時にまさかの妊娠が判明した。
運命のゲーム

運命のゲーム

7.6k 閲覧数 · 完結 · Dripping Creativity
アミーの狼はまだ姿を現していない。でもそれがどうした?彼女には素晴らしいパック、親友たち、そして愛する家族がいる。アルファを含む皆が、彼女はそのままで完璧だと言ってくれる。しかし、運命の相手を見つけた彼女が拒絶されるまでは。心を痛めたアミーは全てから逃げ出し、新しい人生を始める。もうオオカミも、パックも必要ない。

フィンレイが彼女を見つけたとき、彼女は人間の中で暮らしていた。彼は自分の存在を認めようとしない頑固な狼に心を奪われる。彼女は彼の運命の相手ではないかもしれないが、彼は彼女をパックの一員にしたいと思う。潜在的な狼であろうとなかろうと。

アミーは彼女の人生に入り込み、パックの生活に引き戻すアルファの魅力に抗えない。彼女は長い間感じなかった幸せを見つけるだけでなく、ついに彼女の狼も目覚める。フィンレイは彼女の運命の相手ではないが、親友になる。パックの他のトップ狼たちと共に、彼らは最高で最強のパックを作るために働く。

パックの順位を今後10年間決定するパックゲームの時が来ると、アミーは古いパックと向き合わなければならない。10年ぶりに彼女を拒絶した男性を見たとき、彼女が知っていたと思っていたすべてが覆される。アミーとフィンレイは新しい現実に適応し、パックのための道を見つける必要がある。しかし、この予想外の展開は彼らを引き離してしまうのだろうか?
再婚後、クズ元夫が私に土下座した

再婚後、クズ元夫が私に土下座した

50.9k 閲覧数 · 連載中 · ニワハナ
長きにわたって、彼女は半身不随となった夫を献身的に看病し、時に自らの身を危険に晒して治験薬の投与にも協力した。自らの健康を蝕まれながら、夫を死の淵から引き戻したのだ。

しかし、夫がついに自力で立ち上がれるほど回復したその日、彼は初恋の女性を腕に抱き、こう言い放った。
「これからの人生、俺は彼女と、彼女のお腹の子を守っていく」

打ちのめされた彼女が離婚を切り出すと、夫は冷徹に彼女の口座をすべて凍結し、無一文のまま家から追い出し、嘲笑うように吐き捨てた。
「俺がいなければ、お前には何の価値もない」

彼女が妊娠検査薬をそっと隠し持ち、すべてに別れを告げて永遠に立ち去るまで、夫が慌てふためくことはなかった——。
捨てられたルナの復讐

捨てられたルナの復讐

11k 閲覧数 · 完結 · Sherry
「ご親切なことで」

「ベラ」イーサンの声音が変わった。わたしが嫌というほど知っている、あの警告めいた刃が混じる。「いまのフェイは不安定なんだ。おまえが彼女を恨むんじゃないか、これで群れが割れるんじゃないかって、怯えてる。彼女がいちばん望んでないのは、この子が俺たちの間に入り込むことだ」

「だったら、そんなことしなければよかった」わたしは真正面から彼の目を捉え、こちらの瞳に張りついた氷を見せつけた。「息子のところへ戻って」

「いい加減にしろよ」彼は苛立ちまぎれに髪をかきむしった。「何度言えば――人工授精だ。俺の精子を使ったのはそうだが、フェイと俺は――」

ベラは冷えきった鼻笑いを漏らした。なんて厚かましい嘘。彼女の伴侶は、兄の番と関係を持ち、家族ぐるみで彼女を何も持たせず追い出した。愛人が「正しい」座に収まるために、道を空けるように。哀れな愚か者――彼は、彼女がただの厄介な養女で、簡単に切り捨てて支配できると思い込んでいた。自分が探し求めていた天才的な技術者が、まさか自分のルナだったとは、ついぞ知らずに。

彼が自らを汚した時点で、ベラの中ですべては終わった。彼女は彼を拒み、奪われたものを取り戻した。何年も密かに彼女を愛してきたヴィクターの助けを得て、頂点へと駆け上がっていく。

イーサンが彼女を取り戻そうとしたとき、こう言った。「俺たちの子どもを、父親なしで育てたいのか」

ベラは嘲るように微笑んだ。「その子の父親は、あなたじゃないわ」
人生を謳歌する

人生を謳歌する

2.7k 閲覧数 · 連載中 · 午前零時
大学生である私は、兄の家に住んでいた。兄嫁は魅力的で優しく、彼女のすべてが私が理想とする女性像そのものだった。青春真っ只中の私は、彼女と親密になることを夢見ることが多かった。そのような考えが間違っていることは十分にわかっていたので、できるだけ彼女と接しないようにしていた。しかし、驚いたことに、兄が勃起不全であることを知り、彼らは長い間夫婦生活を送っていないことがわかった。彼女は子供を強く望んでいて、兄が彼女を妊娠させることができないために、何度も涙を流していた。ある夜、彼女は私の部屋に入ってきて、「私に子供を授かってくれないか?」と尋ねた。パニックと興奮の間で、私は彼女の目を見ることができなかった。私はどうすればよかったのだろうか?