第3章

一睡もできなかった。

一晩中、窓辺のあの椅子に座って、空がピンクとゴールドの色合いに染まっていく夜明けを眺めていた。私がウェディングブーケに選んだのと同じ色。希望と新しい始まりを象徴するはずだった色。

笑わせるな。

携帯はひっきりなしに震えていた。宗吾からのメッセージ。読む気にもなれなかった。プレビューに表示される文面はどれも同じようなものだった。「おはよう、きれいな君」「今日、君と結婚できるのが待ちきれないよ」「君は世界一素敵な花嫁になる」

そのメッセージの一つ一つが、胸に刺さるナイフのように感じられた。

午前九時きっかりに、ドアの呼び鈴が鳴った。廊下を歩く足音が聞こえる。軽やかで、素早く、プロのそれだ。メイクアップアーティスト。人生で最も大切な日になるはずの、その予定時刻ぴったりに。

何時間も身じろぎせずに座っていたせいでこわばった体を、ゆっくりと起こす。ドアのそばにある鏡に映った私は、ひどい顔をしていた。目の下には濃い隈、紙のように青白い肌、髪はぐしゃぐしゃにもつれている。

「おはようございます、彩音さん!」メイクアップアーティスト――確か、美和さんという名前だったか――は、ブラシやパウダーといった商売道具一式を抱えて勢いよく入ってきた。「お姫様に変身する準備はいいですか?」

私は無理に微笑んだ。「ええ、いつだって準備はできています」

その言葉が皮肉なのは、自分でもわかっていた。

それから一時間、私は美和さんが魔法をかける間、おとなしく座っていた。彼女は結婚式のしきたりについて、私がこんない献身的な男性を見つけられてどれだけ幸運かについて、そして彼女が今まで見た中でこれほど愛し合っているカップルはいないということについて、休むことなく喋り続けた。

「車にメイク道具を忘れてきちゃった」美和さんは携帯を確認しながら言った。「動かないでくださいね!もうすぐ終わりますから。そしたら、いよいよドレスですよ!」

彼女が部屋を出て行った瞬間、私は動いた。

長年、軽い難聴を抱えて生きてきたおかげで、必要なときには素早く、音を立てずに行動することに慣れていた。

美和さんが「最高の花嫁体験を」と言って着せたシルクのローブを脱ぎ捨て、クローゼットに用意しておいた服を掴む。ダークジーンズに黒のフーディー、そして一番履き慣れたスニーカー。結婚する人間ではなく、姿を消したい人間のための服装だ。

ジュエリーボックスから婚約指輪を取り出す。かつては私を世界一幸運な女だと感じさせてくれた、プリンセスカットの二カラットのダイヤモンド。今では足枷のように感じられた。

私はそれを、ウェディングドレスの隣の枕の上にそっと置いた。

ドレスそのものは、まるで幽霊のようにそこに掛かっていた。真っ白で汚れ一つなく、そして壊れた夢の象徴のように。最後に一度だけその生地に触れ、試着したときにどれほど自分が美しく感じたかを思い出す。宗吾がブティックで一番高価なものを、と言い張ったことも。

『彼の体面のためだったんだ』今ならわかる。『すべてが、いつだって彼の体面のためだった』

もう、行かなくては。

アパートの裏口からそっと抜け出し、フードを深くかぶって足早に通りへと向かう。背後で、美和さんが私の名前を呼ぶ声が聞こえた。その声には明らかに混乱が滲んでいる。

「彩音さん? 彩音さん、どこですか?」

私は振り返らなかった。


午前十一時になる頃には、私は長距離バスの後部座席に座り、色付きの窓ガラス越しに桜都の街が遠ざかっていくのを見ていた。携帯は着信とメッセージで爆発しそうだったが、着信音もGPSもオフにした。聞こえるのは、エンジンの低い唸りと、他の乗客たちのひそひそとした話し声だけだった。

聖マリア教会での光景を想像した。宗吾はオーダーメイドのタキシードに身を包み、三十秒ごとにロレックスを確認している。招待客たちは席を埋め、花嫁がただ遅れているだけなのか、それとも何か深刻な事態が起きているのかとひそひそ話している。

携帯の画面が、宗吾からの新たな着信で光った。

今度は拒否するのではなく、応答した。

「彩音!」宗吾の声は、かろうじて抑えられたパニックで張り詰めていた。「ああ、よかった。どこにいるんだ?みんな待ってるし、牧師先生も心配し始めてる。メイクの人が君が突然いなくなったって――」

「行かないわ、宗吾」

沈黙。

「行かないってどういうことだ?彩音、冗談じゃないぞ。きっと緊張してるだけなんだろう、それは普通のことだ――」

「あの録音、聞いたの」

「録音?おい、何の話をしてるのかわからない――」

「あなたのバチェラーパーティーの。私のことをペットだって呼んでたやつ。沙織さんのことを考えながら私とヤるって話してたやつよ」

彼が息を呑むのが聞こえた。再び話し始めたとき、彼の声は完全に変わっていた。冷たく、鋭く、まるで仮面が剥ぎ取られたかのようだった。

「誰が送ってきたんだ?誠か?あのクソ野郎、口が軽すぎる――」

「誰が送ってきたかなんて関係ある?あなたの声よ、宗吾。あなたの言葉」

「彩音、聞いてくれ」彼の口調がまた変わる。懇願するような声に。「酔ってたんだ。男たちの前で格好つけようとして、くだらないことを言っただけだ。バチェラーパーティーがどんなものか、君も知ってるだろう――」

「十年よ」私は遮った。「十年も、愛されてると思ってた。十年も、あなたの慈善事業の対象だったなんて」

「そんなこと――君は――」彼は言葉に詰まり始めた。「彩音、馬鹿なことを言うな。今すぐここに戻ってこい。これがどう見えるかわかってるのか?みんな来てるんだ、教会は満員だし、カメラマンも――」

「どう見えるかなんて気にしない」

「俺は気にするんだ!」電話の向こうで彼の声が爆発した。他の乗客たちが振り返るほどの大声だった。「俺に何をしてるかわかってるのか?俺の家族に?この結婚式に四百万円も使ったんだぞ!」

それだった。本物の蓮見宗吾。何年も前からその断片を耳にしながら、聞かないふりをするよう自分を訓練してきた、本当の彼。

「私はあなたのペットじゃないの、宗吾」

「その通りだ!」彼は唸った。「ペットなら、俺がお前のためにやってきたことすべてに感謝するだろうな!知り合い全員の前で俺に恥をかかせたりしない!」

彼が自制心を失っていくのを聞きながら、私は奇妙なほど落ち着いていた。これが、献身的な保護者という役を演じる必要がないときの、本当の彼なのだ。

「あなた自身が恥をかかせたのよ。十年間も私に嘘をつこうと決めた瞬間に」

「嘘?嘘なんかついたことない!俺はずっと献身的だった――」

「私のことを社会的責任だって言ったわね。障害者の面倒を見ることは自分のイメージアップになるって」

「なるさ!そしてお前は、甘やかされたガキみたいにそれを俺の顔に投げつけるんじゃなくて、感謝すべきなんだ!」

仮面はもう完全に剥がれ落ちていた。甘い愛称も、優しい声もない。ただ、生々しく醜い真実だけ。

「どこにいるんだ?」彼は要求した。「迎えに行く。俺たちでこれを何とかするんだ」

「いいえ、しないわ」

「彩音、今すぐどこにいるか言わないなら――」

私は電話を切った。

携帯はすぐにまた鳴り始めた。今度は完全に電源を切り、ハンドバッグの底に押し込んだ。

窓の外を流れていく郊外の田園風景を眺める。私の後ろのどこかで、教会に集まった人々は、花嫁が来ないことに気づき始めているだろう。誰もが何年も称賛してきた完璧なラブストーリーが、ただの芝居に過ぎなかったということに。

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