第5章

 意識が浮上したその瞬間、感情を押し殺した椎名陸の声が鼓膜を震わせた。彼は誰かと電話をしている。

「水野おじさん、今病院にいるんですが……確認させてください。水野千尋には、俺の知らない既往歴が何かありますか? それとも……過去に大きな手術をしたとか」

 疑っているのだ。

 心臓が早鐘を打ち、口から飛び出しそうになる。

 向こうはスピーカーモードにしているのだろう、父の冷淡な声がはっきりと聞こえてきた。

「既往歴? 陸くん、君は理知的な人間だろう。どうしてそんな茶番に騙されるんだ? 今日はあの子の母親の誕生日だというのに、あの子はドアを叩き壊して乗り込んできて我々を不快にさせ、今度は...

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