第8章

 救急救命室のランプが消えた。

 椎名陸は、飛び込もうとしていた姿勢のまま、その場に凍りついた。医師がドアを開けて姿を現し、マスクを外して疲れ切った悔恨の表情を見せるまで、身動きひとつできなかった。

「申し訳ありません、椎名さん。水野さんの人工心臓は、既に限界を超えた状態でした。……私たちの力では、彼女を救うことはできませんでした」

「重度の拒絶反応により、心機能が停止し、多臓器不全に陥ったのです」

 椎名陸の頭の中で、何かが轟音を立てて弾けた。激しい耳鳴りが止まらない。

「人工心臓……? 何を言っているんですか? 彼女の心臓は健康だったはずです……」

「ええ、もちろん健康ですよ...

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