第3話

お祝いの日、蓮は朝から興奮していた。小さなタキシードを着て、私に一生懸命説明してくれた。「ママ、パパは来てくれるかな?」

蓮が庭で遊んでいる間に、私は浩介に電話した。「浩介、今日は息子の打ち上げよ。いつ来るの?」彼は冷たく答えた。「今日は大事な会議がある。お前たちだけで祝え」

そこへ、浩介からメッセージが届いた。「蓮を連れて本宅の大広間へ来い。今夜は宴会だ」 「パパがサプライズを隠してたんだ! 行こう、ママ!」蓮は喜び、私は不安を抱えながら本宅へ向かった。

広間に着くと、重厚な沈香と月桂樹の香りが漂っていた。「ママ、見て! パパと叔母さんが待ってる!」 蓮が駆け寄ろうとしたその時、浩介の声が響いた。「本日は、私と美智子の結婚の儀にお集まりいただき、感謝いたします」

結婚式——!? 私はその場に凍りついた。これは彼らの披露宴だったのだ。

「パパ!」蓮が駆け寄ったが、浩介は無情にも彼を突き放した。蓮はよろめき、私にぶつかって倒れた。「どこのガキだ。不躾な真似をするな」 「パパ、僕だよ、蓮だよ!」 浩介の声は一層冷たくなった。「人違いだと言っているだろう」

美智子が勝ち誇ったように笑った。「あら、栞じゃない。まだ身の程がわからないの? こんな隠し子を連れてきて、恥をさらしに来たのかしら」

私の怒りは頂点に達した。「浩介、これがあなたの計画だったのね? 蓮を利用して、私たちを辱めるために!」美智子は耳元で囁いた。「後ろ盾のない盲目の女と隠し子が、正当な跡取りの地位を脅かせると思った?」

客たちの嘲笑が聞こえる。私は懐に忍ばせていた小型拳銃を抜き、蓮を背後に庇った。「いい加減にしなさい! 私の息子を侮辱することは許さない。この子の血は、あなたたちの腐った血よりもずっと気高いわ。浩介、あなたは父親を名乗る資格さえない!」

去ろうとした私の頬を、美智子が平手打ちした。「居候の分際で、この恩知らず!」 私は床に倒れ込んだ。「ママ!」蓮が私に抱きつき、「さっさとこの二人をつまみ出せ!」と美智子が叫んだ。警備員が私たちを掴んだ。

しかし、蓮は突然動きを止めた。彼は深く息を吸い込み、卑屈で恭しい声で言った。「浩介様、美智子様。……どうか、母を傷つけないでください。私たちが間違っていました。どうか、お許しください」

浩介が声を震わせた。「……今、何と呼んだ?」 「三浦の当主様」蓮は毅然と言い放った。「自分の立場を理解しました。だからもう、母を傷つけないでください」

息子は私を支えて立たせた。「ママ、行こう」 私たちは静かに広間を出た。あの夜、私の息子は無理やり大人にさせられた。

家に戻ると、浩介から電話があった。「栞、誤解しないでくれ。あの場では三浦の名誉を守るために……」 私は何も答えず、決別の手紙を書き置いた。そして荷物をまとめ、蓮の手を引き、京都へと向かうプライベートヘリに乗り込んだ。

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