第100章 私は早くから彼女はいい人ではないと言っていた

酒井蒼真は、わずかに視線を落とした。

――藤井心海の研究が、もう形になったのか?

もしそうなら、素直に喜ばしい。

だが、早すぎる。どれだけ詰めても、まだ一か月そこそこだ。

……本当に結果が出たのだとしたら。

藤井心海は、やはりとんでもなく優秀だ。

それにしても。

どうして今まで、彼女にそんな才があると気づけなかったのだろう。

胸の奥が、きりきりと痛んだ。

いちばん大切な人を失う予感――その痛みが、息をするのさえ苦しくさせる。

固く閉ざされた扉を見つめながら、酒井蒼真は口元をわずかに持ち上げた。

安堵にも似た笑みが、ふっと浮かぶ。

これでいい。

藤井心海に会えなくても...

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