第103章 内通者は誰だ

内通者が誰なのか――事件があまりに唐突で、今のところ手がかりは何ひとつ掴めていない。

藤井心海の精神状態もあまりに危うい。今夜は、眠れない夜になるのだろう。

二時間後。藤井心海は研究院から出てきた。足取りは重く、顔色も抜け落ちている。

こんなことが起きるなんて、受け入れられない。失望は深く、怒りが湧き上がる――はずだった。

いや、正確に言えば、怒る気力すら残っていない。胸の内にあるのは、恐怖だけ。

松本淳太はずっと彼女のそばにいた。けれど何も言わない。今の心海に必要なのは慰めではなく、静けさだと分かっているから。

「……どうして、こんなことに」

藤井心海がふいに足を止めた。苦し...

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