第116章 一か月後に帰国

  つまり――彼の心配なんて、最初から全部取り越し苦労だったのだ。藤井心海はもう、酒井蒼真にこれっぽっちも興味がない。むしろ、そうなれた自分が嬉しくて仕方ないくらいだった。

  だったら、何を怯える必要がある?

「おめでとう」

  松本淳太はグラスを持ち上げ、心海のそれに軽く当てた。

「これでようやく、苦しいところから抜け出せたってわけだな」

「ううん。まだ足りない」

  心海は笑みを引っ込める。

「離婚届をちゃんと出して、受理されて。そこまで行って、やっと終わり。今はまだ……全然、途中だよ」

  過去を思い出しただけで、胸の奥がざらつく。顔つきも自然と険しくなった。

  ...

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