第119章 手段を選ばず

「……たぶん、そうでしょうね」

 藤井心海は、結局それを受け入れた。

 たしかに疲れている。ここ数晩まともに眠れていないのだ。見間違いだったとしても、おかしくはない。

 医師が去ったあと、心海はひとりベッド脇に立ち尽くし、長い沈黙の中で小さく息を吐いた。

 父は、当分目を覚まさないだろう。

 そして――いまの自分には、別の「やるべきこと」がある。酒井蒼真との離婚。これ以上、先延ばしにはできない。

 この婚姻関係があるかぎり、酒井蒼真は平気で彼女の名誉を踏みにじる。世間体も、噂も、仕事の信用も。彼は「妻」という札を盾にして、好き放題に汚してくる。

 これまでは、耐えた。

 けれ...

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