第23章 藤井夫人の「気遣い」

午後4時、心海が外来棟を出て、正門をくぐった瞬間だった。目の前にすっと人影が立ちはだかる。

藤井夫人。

紫のワンピース。乱れ一つないまとめ髪。隙のないメイク。いかにも上品で、育ちの良さを誇示するような佇まい――けれど、その顔に浮かぶ表情だけは、心海が嫌というほど知っていた。見下ろすような視線。値踏み。気に入らないという苛立ち。

心海は胸の奥に刺さった酸っぱさを押し込み、薄い距離の笑みを貼りつける。

「藤井夫人。何か?」

その呼び方に、藤井夫人の眉がぴくりと動いた。だがすぐに取り繕う。

「場所を変えて話しましょう」

「ここでいいです。私、用があるので」

藤井夫人は眉間に皺を寄せ...

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