第26章 独り寂しがる

松本淳太の表情も、いつになく引き締まった。小さくうなずいて言う。

「……話して」

心海は深く息を吸い込み、父の状況を最初から最後まで、順を追って語った。事故に遭った時刻。損傷した部位。いま採られている治療方針。投薬内容。――そして何より、自分が直面している「詰み」に近い現実。

「今、父が入っている病院……あそこは、酒井蒼真のコネなの」

声は淡々としていた。淡々としすぎて、まるで他人の話をしているみたいに。

「治療方針も、特効薬も、ベッドも……全部、あの人の掌の上。父を連れ出したい気持ちはある。でも下手に動いたら、父の体がもたない。そう思うと、怖くて」

「それに……」と、心海は言葉...

ログインして続きを読む