第29章 姉ちゃん、もがくな

「……ねえ、あんた。あいつに何か言ったでしょ? 心海!! あんたでしょ! あいつの前で可哀想ぶって、惨めな話でもして、『私のことなんか放っておけ』って仕向けたんじゃないの!?」

心海は、ようやく足を止めた。

藤井愛美の声に、心海は言いようのない違和感を覚えた。

絶望に裏打ちされた、乾いた狂気。まるで限界まで張り詰め、今にも引きちぎれそうな弦の音色のように――。

心海は振り返り、藤井愛美を見た。

今度は、いったい何を仕掛けてくるつもりなのか――それを確かめたかった。

バーの薄暗い照明の下で、藤井愛美の顔は歪んで見えた。

見開かれた瞳。白目には赤い血管がびっしり浮き、虹色のライトが...

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