第40章 藤井さん、おめでとう

「わ、私はデタラメなんか言ってません……」

心海の声はかすかに震えていた。けれど、一言一言を噛みしめるように、はっきり言い切る。

「藤井さん、あの日……私、約束しました。だから……最後に、ひと目だけ会いに来ただけです。今日が終わったら、私、出ていきます」

藤井母に叱りつけられたせいで、怖くて言葉が出ない――そう見えるように、心海はわざと口をつぐんだ。

そして視線を、藤井愛美の向こうへ。藤井母の向こうへ。

最後に落ちたのは、酒井蒼真だった。

期待。悔しさ。近づきたいのに近づけない、怯えるみたいな慎重さ。

それに――言葉にできない、見ているだけで胸が痛む何か。

「蒼真……」

か...

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