第48章 海の向こう

「蒼真兄……血が出てるの……すごく痛い……ねえ、来て見てくれない?」

電話の向こうは、二秒だけ沈黙した。

「横にエレベーターがあるだろ」

酒井蒼真の声は淡々としていた。淡々としているのに、背筋が冷えるほど怖い。

「下りて、右に曲がって、三百メートル先にクリニックがある。自分で歩いて行け。間に合う。ぐずぐずしてたら、傷が塞がっちまうぞ」

そう言って、一方的に通話が切れた。

藤井愛美はスマホを握り締めたまま立ち尽くす。手首から落ちる血が、ぽた、ぽた、と床に点を打った。白々しい廊下の灯りの下で、それはまるで、花が一輪ずつ萎れていくみたいに見えた。

唇が震える。涙が、大粒のまま頬を転が...

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