第51章 秘密取引

その日は金曜の午後だった。アドリアンはまたしても、実験室をいつもより早く切り上げた。

黒いリュックを背負い、足早に廊下を抜けていく。

藤井心海は二秒だけ迷い、それから白衣を脱ぎ捨てると、自分の上着を掴んで後を追った。

アドリアンは校門を出ると、学校の裏手に広がる旧市街を東へ向かう。海辺の通りほど賑やかではない。両側には古い住宅と店が肩を寄せ合い、どの店も間口が狭く、照明も薄暗い。通行人はまばらだ。

心海は気づかれたくなくて、距離を詰めすぎないよう慎重に歩いた。

十五分ほどで、アドリアンはさらに細い路地へ折れる。両脇には背の高い石塀。塀の上には雑草が伸び、足元の石畳は凸凹だらけだった...

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