第52章 携帯を私に渡せ

酒井蒼真は藤井心海の腕を乱暴に掴むと、ぐっと引き寄せて背中に回し、自分の体で前へ立ちはだかった。

「……どういうことだ」

声は低く、切迫していた。

心海は説明する暇もない。

「早く、行って!」

――けれど、もう遅い。

スキンヘッドの男が手下を二人連れ、追いついてくる。三人が路地の出口を塞ぐ形で並び、逃げ道を断った。

アドリアンの姿は、どこにもない。

スキンヘッドの男は酒井蒼真を見ると、目を細めた。突然割り込んできたアジア人の男を上から下まで舐めるように値踏みし、濃い訛りの英語で、蒼真の背後にいる心海へねっとりと視線を絡める。

「お前、何を見た」

蒼真は一歩も退かない。体を...

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