第56章 海食洞

「心海の実母……? あの家、ずっと貧乏だったじゃないですか。言い間違いじゃ……藤井のおばさんのことですよね?」

酒井蒼真は信じられない、という顔で言った。

「はぁ……お前は知らなくていい。口出しするな。加藤さんが心海を見つける」

酒井の父は説明する気もないらしく、投げやりに言って電話口を遠ざけた。

酒井蒼真はスマホを握る指に力を込める。

「じゃあ、坂本教授と加藤さんは――」

「坂本教授は、加藤さんの長年の友人だ」

父の声が、ずしりと沈んだ。

通話が切れたあとも、蒼真はその場から動けなかった。

脳裏に、藤井心海がF国へ来てからの出来事が次々と蘇る。

研究所に入って、プロジェ...

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