第57章 先輩、泣かないで

ようやく、彼は洞の出口を飛び出した。

頭上に光が戻る。巨大な眼球みたいに、深淵を見下ろしている。

彼はその光へ向かって泳いだ。腕の中の藤井心海は、羽根みたいに軽い。彼女の頭は彼の肩に預けられ、黒髪が水の中でふわりと散って、彼の腕に絡みつく。

酒井蒼真は岩礁地帯の外縁で捜索していた。振り向いた瞬間、ライトの光束が松本淳太のいる方角をかすめる。

松本淳太が抱えている人影が見えた。蒼真は必死に泳いだ。だが、横から暗流がぶつかってきて、身体を逆方向へ押し流す。

1メートル進めば、半メートル戻される。もがくほど、潮に嘲笑われるみたいだった。

松本淳太が藤井心海を抱いたまま、少しずつ水面へ上...

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