第58章 一年延期

シャツはくしゃくしゃで、袖は肘までまくり上げられている。腕には、あの日、岩礁で擦りむいた傷が残ったまま。淡い褐色のかさぶたが薄く張りついていた。

その傷跡を見た途端、藤井心海の目の縁がじわりと赤くなる。

「先輩……」

声は、紙やすりみたいにざらついていた。

松本淳太がはっと目を覚ました。彼女が目を開けているのを見て、椅子からバネでも仕込んだみたいに跳ね起きる。

「起きたのか? どこかつらい? 先生呼ぶか?」

もう手はナースコールへ伸びている。

「大丈夫」心海は小さく首を振った。「ただ、言いたいことがあって……」

「何だ?」

松本淳太は彼女の口元に耳を寄せた。声を出すだけでも...

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