第63章 加藤さん

藤井心海の口元が、ふっと持ち上がった。

歓迎会が開かれたのは、それから三日後のことだった。

実験室の同僚たちが休憩室を急ごしらえのパーティー会場に仕立て、テーブルの上には各自が持ち寄った料理がずらりと並ぶ。

藤井心海は半ば押し出されるように人だかりの真ん中へ連れていかれ、手のひらにシャンパンのグラスを押しつけられた。

「ひと言、いけー!」

誰かが囃し立てる。

シャンパンを持ったまま、心海は周囲の笑顔を見回した。いざとなると、何を言えばいいのかわからない。

「わ、私……」

口を開いた途端、喉の奥がきゅっと締まる。心海は一度大きく息を吐き、言い切った。

「長い話はしない。ひと言...

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