第69章 離婚、交渉の余地なし

藤井心海の両手がほどけた瞬間、腕の先からじわりと血が戻り、痺れが一気に押し寄せた。

手首を回している暇なんてない。まず口元のガムテープを引き剥がす。

それから震える指で足首のテープをほどき、壁に手をついて立ち上がった。長時間血が巡らなかった脚は言うことを聞かず、よろけた拍子に膝をコンクリートへ打ちつける。

「っ……!」

冷たい痛みに息を呑み、歯を食いしばって起き上がる。ふらつく脚を引きずり、密室の出口へ向かった。

――やっぱり、外から鍵がかかっている。

藤井心海は振り返り、換気ダクトを見上げた。

吹き出し口は天井近く。床から2メートルほど。

彼女は古い段ボール箱を片っ端から引...

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