第70章 藤井愛美、来た

藤井心海はメッセージを送り終えるとスマホを置き、シートの背にもたれて、疲れたように目を閉じた。

酒井蒼真が離婚に応じないなら――誰かに、応じざるを得ない状況を作らせればいい。

何より、藤井愛美が動いてくれさえすれば、A市にいる父は安全になる。

「心海」

松本淳太の声が、彼女を思考の底から引き戻した。

目を開け、横目で彼を見る。

彼は張り詰めた弦みたいに硬い表情のまま、言った。

「これからは、何かあったら必ず俺に言って。いい?」

藤井心海は答えず、そっと彼の肩に額を預けた。

松本淳太の体が一瞬だけ強張る。だがすぐに肩をわずかに落とし、彼女が楽に寄りかかれる角度を作ってやった。...

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