第75章 先輩危うし!

松本淳太は彼女を見つめた。ほんの一瞬、腕を伸ばして抱きしめてやりたくなる。けれど、結局動けなかった。

「心海。言っただろ、これからは一人で無理して抱え込むなって。俺が手を貸すのは、そんな泥に足を取られて、お前が咲けなくなるのを見たくないからだ。お前には、お前の場所がある」

言い終えると立ち上がり、キッチンへ向かう。

「腹減っただろ。飯、作る」

リビングはソファ脇のフロアライトだけが点いていた。あたたかな黄の光が、彼女を包み、彼も包む。

藤井心海の目の縁が、ようやく赤く染まった。

窓の外では、いつの間にか雨が止んでいる。

彼女はスマホをテーブルに置き、立ち上がってキッチンへ入った...

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