第5章
次の瞬間、堅牢な黒曜石の床が、音もなく総崩れになった。
失重。私は深淵へ真っ逆さまに落ちる。豪雨すら蒸発させる熱波が下から噴き上がり、闇の中から伸びた逞しい腕が腰を掬って、空中で私を強引に止めた。
肌が触れた途端、濡れきったスカートの裾がふわりと白く湯気を上げる。
――熱い。
受け止めたのは男だった。上半身は裸で、筋肉の輪郭は切り出した黒岩みたいに無駄がない。肩口から脇腹へ、血管に沿うように細かく硬い黒い竜鱗がびっしり覆い、呼吸のたびに危険な鈍光を返す。
男は私を見下ろし、品定めするように目を走らせた。
「俺の金庫に、いつから死にかけの雛が迷い込んだ?」
声は低く、底へ沈む。私...
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