第6章

重く古びた黄銅の大門は、イグニスが指先で軽く弾いただけで「ぎい」と軋み、ゆっくりと口を開いた。

ケイルは力が抜けたまま敷居へ倒れ込み、泥にまみれた身体を震わせる。かつては皺ひとつなく仕立てられていた純黒の婚約礼服も、今は自分の手で引き裂かれてぼろぼろだ。裾には草屑と血痕。指の間には木屑がびっしり――さっきまで狂ったように扉板を掻きむしり、削り取ったものだ。

私の姿を捉えた瞬間、灰を被ったみたいに濁っていた瞳が、ぎらりと灯った。狂喜と卑屈がないまぜになった光。溺れた者が最後の浮木に縋る目。

「エララ! エララ、生きてた!」

四つん這いで這い寄り、膝を石に擦りつけても痛みなど忘れたように...

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