第4章
呪文は、届くものすべてをかき回していった。
五歳の私。戸口で眠り、狼を胸の奥に押し潰すようにして怯えさせていた。誰も私に寝床をくれなかったのに、群れの避難所だけはベッドを用意してくれた。初めてイゾルデに会った夜――避難所の共同テーブルの隣に彼女が腰を下ろし、私が話す価値のある相手みたいに話しかけてくれた。
二年後の群れの集まりでのカエル。人でごった返す部屋の向こう側から。私を、見ていい存在みたいに見ていた。
記憶は規則もなく巡った。幼少期。イゾルデ。カエル。結婚式。来ては消え、また来ては消える――呪文が触れられるものはすべて、けれど肝心なものだけは何も。
魔女が両手を下ろした。
「この子の狼魂が、意図的に抽出を拒んでいる。こんな抵抗は初めてだ。呪文だけじゃ突破できない」
私はカエルを見た。唇は動いた。だが、もう声が出せなかった。
彼はそれを侮蔑と受け取った。私の目の前で、彼の中の何かが決断を下すのが見えた。
カエルは魔女のローブの胸元を掴んだ。
「手段は何でもいい。やれることは全部やれ」
群衆の前のほうにいた雌狼が――カエルが私を見るよりずっと前から、長いこと彼を見つめ続けていた雌狼が――一歩進み出て、彼の袖を掴んだ。
「銀は接触点で狼魂と肉体の繋がりを断つ。両方の掌を貫く直撃なら、痛みがそこまで深ければ狼魂は遮断を維持できない。何だって無理よ」
ヴィヴィアンはもう動いていた。ホールを出て、銀弾を装填した拳銃を持って戻り、言葉もなくそれをカエルの手に渡した。
群衆が声を取り戻す。
「やれ。人さらいが野放しでいる日が一日増えるたびに、雌狼がもっとああいう場所に送られる」
「ここまで生き延びて、まだ一言も吐かない。ほかのやり方じゃ折れない」
カエルが、椅子に座る私のところまで歩いてきた。彼は私の左手を取り上げた。掌を上に向けさせ、そのまま支える――親指が一度だけ中央を撫でた。ゆっくりと。
それから、銃を上げた。
「後悔するぞ」と私は言った。
「俺が後悔してるのはな」と彼は言った。
「お前が何者か、見抜くのに時間がかかりすぎたことだけだ」
引き金が引かれた。
銀は、ほかのものみたいに燃えるわけじゃない。一直線に狼魂へ届く――神経という神経が一斉に点火し、肉体と魂が重なって叫ぶ。私の狼がそれに身体ごとぶつかり、そこにあるのが銀の熱だけだと知って、さらに銀が彼女の中を焼き抜いていく。椅子に座っていられなかった。喉から出た音は、自分のものだと認識できない種類のものだった。
「後悔するぞ」と、私はもう一度言った。言葉になっていたのかはわからない。
彼は私の右手へ移った。
「俺が後悔してるのは一つだけだ」と彼は言った。「それはこれじゃない」
二発目が放たれた。
私の狼魂の遮断が、ひび割れて崩れた。
流れ込んできた記憶は、私が見せようとしていたものじゃなかった。
クレセント・ベイの廊下。夜更け――主な部屋は静まり返っていた。私は壁伝いに、光を避けながら進んでいたとき、扉の向こうからイゾルデの声が聞こえた。張り詰めていて、半分泣いているみたいで。取っ手に手をかける前に、彼女の名前が口からこぼれた。
考える間もなく、私は扉を押し開けていた。
中にいた人物を背後から捕まえ、二人まとめて床に倒れ込んだ。衝撃で記憶がぐらりと跳ねる――床、誰かの腕、跳ね返って開く扉。それから私は仰向けになり、上にいるそいつがすっと身を起こして、見下ろしてきた。
群れの館のホールが、完全な沈黙に沈んだ。
部屋にいる全員の顔が、同じ表情をしていた。
「そんなはずがない」
「セレンは、私たちに何を見せてるの?」
