「裸足の夜」

祈がコーヒーを一口で半分飲んだ。熱くて目を細めた。「今何時?」

「十時八分」

祈はカップを置いた。「住所を送って」

紬がスマートフォンの画面を向けて一瞬見せ、それから付け加えた。「あちらは日差しが強い。日焼け止め、十分に」

祈はすでに出口へ向かっていた。振り返って了解のジェスチャーをした。

大田区臨海。午後二時近く。

強い日差しが工事現場の鉄板の囲いを焼いていた。近づくとコンクリートの匂いと遠くの機械音が混じって届いた。

祈はヘルメットをつけ、作業員の佐藤健司と一緒に基礎の縁にしゃがみ込んで、数値を一つずつ照合していた。

靴が合わなかった。右足のかかとの皮が午後一時過ぎに破れた...

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