「薔薇垣の影」

「いえ、大丈夫です」

 

祈は無理やり笑みを作り、カタツムリのような速度で前へ進んだ。

 

二歩ほど歩いたところで足を止め、うつむいて自分の足元を確認し、それからまだどれだけ距離があるかを見上げた。

 

奥歯を噛んだ。

 

片手を朔の腕に絡めた。

 

朔は何も言わなかった。口の端がかすかに持ち上がった。まるで最初からそうなると分かっていたような、静かな弧を描いて。

 

祈は彼を見なかった。視線を前に向けたまま、耳の後ろがじわりと赤くなっていた。

 

二人並んで扉を押し開けた。

 

朔が先に入り、祈がその後に続いた。右足を踏み出すたびに、足首から鈍い灼熱感が這い上がってくる。それでも顔には出さな...

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