「隣人」

祈が振り返ると、理緒がアシスタントを連れて施工用通路から入ってくるところだった。

「この柔光タイルの反射係数は設計要件と完全に一致しています」祈はサンプル比較ファイルを持ち上げた。「施工業者も在庫十分と確認済みで、予定通り進められます」

「気に入らない。マットに変えて」

理緒の口調は、気に入らない上着を選び直すようだった。

祈はすぐには引き下がらず、データ欄を開いて見せた。「前回のプレゼンで、この空間には温かみのある音場環境が必要だとおっしゃいましたよね。柔光タイルは中高音域の吸音性能がマットタイルより十二パーセント高くて——」

「気に入らないと言った」理緒が遮り、振り向いて祈を真正...

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