「誰かの名前」

珍妮の声が外から聞こえた。「祈、サラダ作りすぎちゃって——」

祈は咄嗟に朔の腕を掴み、寝室へ押しやろうとした。朔は微動だにしない。

「先に入って!」と声を潜める。

「なぜ。お前の家にいて違法じゃない」

「彼女、あなたが社長だって知ってるの!ここにいるの見られたらどう説明すればいいの!」

朔は三秒ほど祈を見つめ、口角をわずかに持ち上げてから、ゆっくりと寝室に入った。ドアが閉まる直前、一言だけ残した。「麺に卵を入れろ」

祈は深く息を吸い、玄関へ向かった。

「ごめんね珍妮、シャワー浴びてて——」

「こんな遅くに?」珍妮が部屋の中を覗き込む。「二人の声が聞こえた気がしたんだけど……」

...

ログインして続きを読む