「外人」

梢が淡い灰色の着物を纏い、四十代半ばの女性の腕を取って奥の個室へ向かっていた。

白河家の奥方だった。

以前、会議室の入口ですれ違っただけだった。相手はこちらを一瞥し、口元に儀礼的な微笑みを浮かべていた。けれどその視線がとどまった時間は、礼儀の範囲をわずかに超えていて、何かを確かめるような色があった。

祈にはうまく言葉にできなかったが、なぜかそのことだけが記憶に残っていた。

「どうした?」慎が祈の視線をたどった先では、個室の引き戸がすでに閉じられていた。「知り合い?」

「……まあ、一応」祈はメニューを立て直して、自分の顔を隠した。

慎は追及せず、茶碗を持ち上げてひと口飲んだ。しばらく...

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