「値段」

祈はまばたきした。

その言葉の一語一語は聞き取れたのに、つなぎ合わせると異国語のようだった。

「……牧野さん?」

慎はふっと笑い、手を伸ばした。指先が祈の髪に触れた。頭を叩くのでもなく、くしゃりと乱すのでもない。毛先に沿ってそっと梳き、指の腹が耳の後ろの肌をかすめた。

祈は固まった。

「上司と部下の話をしてるんじゃない」慎は手を引き、声を落とした。「聞いてくれればいい」

その目は穏やかで、率直で、一切のためらいがなかった。

祈は口を開きかけたが、何も出てこなかった。頭の中が真っ白だった。浮かぶのは図面ばかりだった。深夜の修正指示、自販機の前で手渡される微糖のコーヒー——それらを「...

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