「産声の前に」

言い捨てるように、朔が先に大股で歩き出した。

祈は眉をひそめ、後を追うしかなかった。

慎が一歩踏み出そうとしたが、千葉がさりげなく前に立ち、軽く腰を折った。「牧野先生、こちらへ——」

エレベーターの扉が閉まった瞬間、空気が変わった。

朔は正面を向いたまま一言も発さない。衬衫前身頃のコーヒー染みが白い生地の上で刺目だった。

階数表示の数字が点滅する。二人きり。

祈はエレベーターの内壁に背を預け、彼からできる限り距離を取った。

朔の横顔は刃で削り出したような輪郭で、顎のラインが強く張っている。その身体から無音で放射される圧が、密閉された金属の箱を満たしていた。

数字が管理フロアで止...

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