「手術台の上で」

此花は廊下の奥のベンチ横にしゃがみ込み、両手で顔を覆っていた。肩が止まらずに震えている。

奏汰がその前に立っていた。両手をポケットに突っ込み、顎を引き締めて。

祈は音を立てずに一歩退いた。スリッパの底が床を擦り、かすかな摩擦音を立てた。

奏汰の視線がこちらを掠めた。目が合う。その表情が一瞬硬直し、すぐに反対方向へ足早に去った。

祈は何も言わなかった。振り返り、来た道を病室へ戻る。

壁に手をつきながら、指先が白くなるほど力を込めていた。

振り返らなかった。脚が出てきたときより重い。

自動販売機にはたどり着けなかった。水も買えなかった。

此花が妊娠していた。奏汰はおろせと言っていた...

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