「空穴来風」

「終わりましたか」

「はい」

「車は入口に待たせてあります」

千葉がすでに廊下の奥に立っていた。

「浅野さん、マンションまでお送りします」

祈は車に乗り、バックミラーに映る病院の建物が徐々に小さくなっていくのを見ていた。

「あの人は?」口にしてから、自分が訊いていることに気づいた。

千葉はエンジンをかけ、いつもと変わらない口調で答えた。

「社長は今、本社におられます。昨日浅野さんからお電話があったとき、来期の全体取締役会の最中でした。報告を受けて、会議を途中で退席されました。十数名の取締役が会議室に残されたままです」

千葉は一拍置いて、バックミラー越しに祈を見た。

「七年お...

ログインして続きを読む