「崩落」

緒響ワークスタジオの生活館改装現場。足場の金属骨組みが朝の光の中で冷たい灰色の光沢を帯びていた。

祈は白いヘルメットをかぶり、施工進捗表を手に挟んで、二階の廊下に沿って壁面の下地処理を一つずつ確認していた。

慎は本来ここに来るべきではなかった。肩の怪我がまだ完治しておらず、医者からは少なくともあと一週間は安静にするよう言われていた。

だが今朝祈が現場に着いたとき、慎はすでに入口に立っていた。細いフレームの眼鏡にわずかな粉塵がつき、手には丸めた図面。

「通りがかりだ」それだけ言った。

祈は見破らなかった。歩くとき左肩にはまだ不自然なこわばりがあり、スーツの上着はずっと右腕にかけたまま袖...

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