「手のひらの血痕」

ドアに鍵はかかっていなかった。祈は引き開けて廊下に飛び出し、五歩走らないうちに、黒服の男が二人、左右から迫ってきた。一人が左腕を抱え込み、もう一人が右肩を押さえつけた。

祈はもがき、蹴り、噛みついた。だが体格差はあまりにも大きく、その場に完全に固定された。

晴彦が部屋から出てきて、シャツの襟元を整えた。足取りは落ち着いていた。さっきの一撃がちょっとした余興に過ぎなかったかのように。

祈の前まで来て、見下ろした。

祈は顔を上げ、睨みつけた。目の縁は赤く、唇は噛み切って血が滲んでいたが、視線に哀願の色は微塵もなかった。

晴彦は小首をかしげ、その目を見つめた。

「……面白い」小さな声で言...

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