「微熱の残像」

銀座の老舗珈琲店の扉を押し開けると、祈はすでに梢が窓際の席に座っているのを見た。

白磁のティーセットがテーブルの中央に置かれ、カップとソーサーの縁には薄い金の文様が描かれていた。梢はベージュのスーツを着て姿勢よく座り、雑誌の誌面から切り抜いたような佇まいだった。

「浅野さん、どうぞ」

梢は微笑みながら立ち上がり、自ら椅子を引いた。祈が腰を下ろすと、キャンバスのトートバッグを膝の上に置いた。

「濡れませんでしたか?さっきメッセージで途中で大雨に遭ったと……間に合わないかと心配していました」

梢はティーカップを祈のほうへ押しやり、声にちょうどよい気遣いを滲ませた。

「大丈夫です。車が動...

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