第63章「残夢と指輪の予兆」
「ちょっと疲れただけ」祈は無理に笑ったが、言葉が終わらぬうちに盛大なくしゃみをした。
朔は「休むか?」とは訊かなかった。腰を屈めて、椅子から抱き上げた。
「ご飯、まだ――」
「熱が下がったら、立花に作り直させる」
立花は黙って食器を片付け、振り返って解熱シートと温めた水を準備しに行った。朔が祈を抱いて階段を上るとき、腕にわずかに力が入った。
立花の前で祈にこうした行動を取るのは初めてだった。全世界に物理的な距離を保つ男が、今は何の躊躇もなかった。
朔は祈をそっとベッドに降ろし、すぐに彼女の傍らに横たわって、羽毛布団を引き寄せて二人を包んだ。
祈は首をすくめた。「うつるよ」
「ち...
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チャプター
1. 「名も知らない朝」
2. 「苦い朝と、夜の檻」
3. 「夜の残響」
4. 「悪阻」
5. 「無視できない意外」
6. 「四十七階の男」
7. 「衝突路地の真相」
8. 「迫る正体」
9. 「距離と体温」
10. 「切れた街灯の下」
11. 「縁」
12. 「夜の宿りと、解けた緊張」
13. 「静かな陥穽」
14. 「彼女の疑惑」
15. 「負い目の清算」
16. 「境界線」
17. 「裸足の夜」
18. 「薔薇垣の影」
19. 「強引な保護」
20. 「予期せぬ来訪者」
21. 「ゼロの援軍」
22. 「取り繕えない夜」
23. 「二つの顔」
24. 「茶色の熊のぬいぐるみ」
25. 「夜景の名前」
26. 「夜明けの輪郭」
27. 「宿縁の停車」
28. 「信頼の行方」
29. 「濡れ衣の瞬間」
30. 「明かされた身分」
31. 「距離と鼓動」
32. 「落とし穴」
33. 「掌に宿る決断」
34. 「母の残像」
35. 「灯が消えるまで」
36. 「距離と体温」
37. 「隣人」
38. 「誰かの名前」
39. 「外人」
40. 「値段」
41. 「産声の前に」
42. 「手術台の上で」
43. 「手術台」
44. 「答え」
45. 「凍りついた地下室」
46. 「お前が泣いていたから」
47. 「空穴来風」
48. 「夜明け前の温度」
49. 「崩落」
50. 「硝子の爪」
51. 「腕の中の不眠」
52. 「届かない手」
53. 「届かない電波」
54. 「手のひらの血痕」
55. 「ただいま」
56. 「隣に立つ覚悟」
57. 「宣戦布告」
58. 「全世界を敵に回しても」
59. 「桃花三輪」
60. 「火の記憶」
61. 「梅雨」
62. 「微熱の残像」
63. 第63章「残夢と指輪の予兆」
64. 「未完成の弧の指輪」
65. 「交わらぬ思い」
66. 「凛月庵の朝」
67. 「触れられない」
68. 「帰りを待って」
69. 「五十九秒」
70. 「サプライズ」
71. 「本当の理由」
72. 「箱根の一夜、別れの河川敷」
73. 「天使の刃」
74. 「靴箱の横」
75. 「照烧チキンの弁当」
76. 「借り物の黒いドレス」
77. 「静かな失望」
78. 「洗面所の鍵」
79. 「白いシャツの衿」
80. 「手首の銀の鎖」
81. 「横浜行き」
82. 「招待状のない夜」
83. 「行くな」
84. 「条件」
85. 「記憶の破片」
86. 「封印された記録」
87. 「路地の刃と差し伸べた手」
88. 「崩れた嘘」
89. 「仮面の崩壊」
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