第63章「残夢と指輪の予兆」

「ちょっと疲れただけ」祈は無理に笑ったが、言葉が終わらぬうちに盛大なくしゃみをした。

朔は「休むか?」とは訊かなかった。腰を屈めて、椅子から抱き上げた。

「ご飯、まだ――」

「熱が下がったら、立花に作り直させる」

立花は黙って食器を片付け、振り返って解熱シートと温めた水を準備しに行った。朔が祈を抱いて階段を上るとき、腕にわずかに力が入った。

立花の前で祈にこうした行動を取るのは初めてだった。全世界に物理的な距離を保つ男が、今は何の躊躇もなかった。

朔は祈をそっとベッドに降ろし、すぐに彼女の傍らに横たわって、羽毛布団を引き寄せて二人を包んだ。

祈は首をすくめた。「うつるよ」

「ち...

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