「未完成の弧の指輪」

屹は手を離し、半歩後ろに退いた。祈はスカーフを差し出して一礼し、振り返って駅の方向へ歩き出した。

カフェの入口で、屹はその場に立ったまま、背中が街角に消えるまで見送った。

ゆっくりと拳を握った。また開いた。

スマートフォンの画面が点いた。秘書からのメッセージだった。中村さんから、今夜お時間があれば夕食をご一緒できないかとのことです。

その文字を見つめ、親指が画面の上で止まった。

祀奈が柔らかい声で「きっとまた会いに来てくれると思ってた」と言ったときの顔が浮かんだ。すぐに別の場面に塗り替えられた――さっき祈が転びかけて顔を上げた瞬間、わずかに開いたあの瞳。

返信した。わかった、どこか...

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