「帰りを待って」

視線が泳いでいた。目を合わせられない。肩がかすかに震えていた。

朔は身を起こした。声に何の感情も乗せずに言った。「わかった」

踵を返してドアへ向かった。今度は立ち止まらなかった。

扉が静かに閉まった。

廊下で、朔は足を止めた。

扉の向こうから、かすかな呼吸音が届いた。必死に押し殺した、砕けるような息。もう限界だというように。

朔はその場に立っていた。手が体の横に垂れ、五指がゆっくりと握られ、またゆっくりと開いた。

いつもの祈とは違う。

疲れたときは肩に寄りかかってくる。悔しいときは睨んでくる。避けることなど、一度もなかった。

目が腫れていた。声が掠れていた。やめてと言ったとき...

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