「五十九秒」

「酔っていたのを言い訳にしないで」祈が遮った。声が震えていた。

「私は——」と手を握りしめた。爪が肉に食い込んだ。「やっと自分の人生が良くなってきたと思えてたのに。全部壊れた」

朔の顔が脳裏をよぎった。腹の中の子ども。もし真実が露わになったら——そこから先は考えられなかった。

「あの夜、君も飲んでいた」慎が焦って言葉を出した。「俺は無理やりじゃ——」

言いかけて、自分でも止まった。でも取り返しはつかなかった。

祈は二秒、固まった。それから笑った。苦くて、渋い笑いだった。

「そうね。あなたの言う通り。私自身の問題。それでいい?」

慎が一歩踏み出し、肩を掴もうとした。

祈が弾けた。...

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