「迫る正体」

車が静かな坂道に入った。両側に刈り込まれたツゲが続いていて、街灯に照らされた葉が濃い緑色に光り、車窓の外を一定の速さで流れていった。

祈が最初に目に入ったのは駐車場だった。

黒い車が一台ずつ隙間なく並んでいた。色の違うものは一台もなく、斜めに停まっているものもなく、全部が同じ位置に収まっていた。定規で測ったような整列だった。

次に入口が見えた。白い建物で、大きくはないが、すべての窓に灯りがついていて、夕暮れの薄暗さの中で坂道に嵌め込まれた発光体のように見えた。

扉の前に六人が立っていた。全員が白衣を着て、二列に並んでいた。

車が止まった瞬間、先頭の医師が素早く前に出てドアを引き開け、深く頭を下げた。

その角度が不自然なほど正確で、繰り返し練習したものだと一目でわかった。

隣の看護師も同時に頭を下げた。同じ深さで、半拍も速くなく、遅くもなかった。

「神宮様、ようこそおいでくださいました」

祈は朔の後ろについて中に入った。医療スタッフの目線が気になった——彼らが朔を見る目は、上客に向ける愛想ではなかった。緊張だった。絶対に失敗できないという種類の、張り詰めた緊張だった。

視線は彼の動きを追いながら、直視しなかった。

銀座のレストランで同じ目を見たことがある、と祈は思った。最上級の客が来たとき、フロアマネージャーだけがあういう顔をした。でもあれは一人だった。ここには六人いて、二列に整然と並んでいた。何と呼べばいいかわからないものを迎えるような光景だった。

廊下が長かった。床が磨かれていて、天井の灯りが映り込んでいた。

先を歩く医師は半分腰を折ったまま、歩調を意図的に落として、常に朔の一メートル前を保っていた。

祈は後ろを歩きながら、その背中を見て、すれ違うドアがどれも半開きになっていることに気づいた。扉の向こうに人が立っていたが、誰一人出てこなかった。

わかった、と思った。この廊下全体の人間が待っている。彼が通り過ぎるのを。

診察室は祈が住んでいる公寓の一部屋より広かった。空気に消毒液の匂いが極わずかに混じっていて、木質系の香りで意図的に抑えられていた。医療感を薄めるための工夫だとわかった。

主任医師が自ら消毒して薬を塗った。指先の力が異常に軽くて、磁器を扱うようだった。看護師が横で器具を渡していたが、その一動作一動作に過剰な慎重さがあった——患者への慎重さではなく、この部屋にいるもう一人の人間への慎重さだった。

「浅野さんはお強いですね。この程度の擦り傷で悲鳴を上げる方が多いんですが」

「慣れているので」

朔は窓際に立って、背を向けていた。電話が鳴って、出た。声を落として話していた。

「七番案の予算上限は変えない。超えた分は削って作り直せ」相手が何か言った。朔の返しは一言だった。「それはあなたの問題です」そして切った。挨拶もなく、間もなく、通話全体で三十秒もかかっていなかった。

祈は膝の包帯に目を落としたまま、耳がその声を追っていた。

バイトで接客してきた金持ちの男たちは、部下を否定するとき最後に「もちろん、あなたのご意見も参考にします」と付け加える習慣があった。逃げ道を作る、あの滑らかさがあった。

この男にはそれがなかった。強硬というより、相手の感情が最初から計算に入っていないような言い方だった。

医師が退室した。ドアを閉める音がほとんどしなかった。

診察室が静かになった。窓の外から車の音が一、二度聞こえたが、別の世界の出来事のように遠かった。

「封緘袋は届きましたか」祈から口を開いた。この沈黙に飲み込まれたくなかった。

「千葉が動いたなら、問題ありません」

千葉。

その名前が祈の頭の中で弾んで、ある方向へ転がり始めた。引き止めようとしても、止まらなかった。

入社オリエンテーションで配られた組織図。最上段、社長の名前のすぐ下のボックス——〈社長特別補佐:千葉〉。

金縁の眼鏡。タブレット。穏やかな顔立ち。給湯室で会釈してきた男。廊下で上層階専用エレベーターから出てきて、すれ違いざまに首を傾けた男。あの傾け方は見知らぬ人間を観察するものじゃなかった。すでに知っている答えを照合するような動きだった。

そのとき不思議だと思った。深くは考えなかった。

でも今になって問いが形を作った——なぜ社長特別補佐が、入社したばかりの末端の社員に目を向ける?

全部、つながった。

祈はゆっくりと顔を上げて、彼の右手の黒い皮手袋に視線を当てた。

この男が現れるたびに、あの手袋はあった。ホテルの部屋でも、バスルームから出てきた後、シャツより先に手袋を身に着けていた。どんな衣服より優先して。

紬の言葉が記憶の底から浮いてきた。

肋骨の内側を何かが締め付けた。

「うちの会社の社長も、神宮という苗字ですね」

声が小さかった。自分に言い聞かせているような声だった。

指先が包帯の端に食い込んで、指の関節が白くなった。

「私が履歴書を送った会社。面接を受けた場所。必死に守ろうとしている仕事——」

そこで止まった。

診察室が静まり返っていた。窓の外の車の音も消えていた。何かが音もなく張り詰めていくような静けさだった。

もしこの男が本当にその人間なら——神宮ビルの中で、各部門の部長たちをエレベーター前に整列させる権力者。一本の電話で社長補佐を動かせる存在。

そして同時に、六本木のクラブで、祈に接客が乱暴すぎると叱られた男でもある。

この二週間、自分は一体何をしていたのか。

彼の会社の中で上司に気を遣い、彼のビルのエレベーターで肩を縮め、それでいて彼の前では臆面もなく怒鳴り散らしていた——彼は何も言わなかった。

祈は診察台の縁を掴んで、視線を上げた。

朔は窓際に立っていた。逆光が輪郭を濃い影に変えていた。

目を逸らさなかった。もう待てなかった。

「あなた、まさか神宮控股の社長じゃないですよね」

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