「手首の銀の鎖」

運転手はバックミラーの中でこっそり笑い、もう冗談を言わなかった。返事が返ってきただけで、十分すぎるほどだった。

赤信号。車が止まった。

屹は窓の外のコンビニの灯りを見ながら、昨夜の細部が次々と浮かんできた。冰見に電話したときの祈の落ち着き。水浸しの洗面所の床にしゃがんで傷口を包んでいたときの集中した顔。ドアの外に一晩中座っていた祈——うとうとしながら、ドア越しにかすかな鼻歌が聞こえた。恐怖を紛らわすために自分へ向けて歌っていたような、そんな旋律だった。

確かめられた気がした。祈と知り合ってから、長い間空いていた内側の何かに、角の一つが埋まった。

満ちている。でも怖い。

屹は長く息を吐...

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