「封印された記録」

朔は何も言わなかった。

 

後退して、背を向けた。窓のほうへ歩き、カーテンの端を少しだけ引いた。灰白色の朝の光が流れ込んでくる。

 

その背中が光の中に立っていた。

 

肩のラインが固い。両手が体の脇に垂れている。手袋のない、剥き出しの両手。右手の指の関節が白くなっていた。

 

「……先に戻れ」

 

祈は口を開きかけた。その背中を見つめた。そこに漂っているものが、何なのかうまく言えなかった。冷たさではない。拒絶でもない。何か大きなものが、静かに組み直されているような沈黙だった。

 

何か言おうとした。でも結局、何も出てこなかった。

 

ドアを引いた。出ていった。

 

ホテルのロビーの回転ドアが...

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