「仮面の崩壊」

梢がヒールを鳴らして病室に入った瞬間、視線は朔の包帯を巻いた右手に落ち、半秒止まってから祈へと滑った。

朔の左手が祈の肩に置かれている。二人の距離は見舞いというより、何か確認された帰属を示していた。

梢の足が一瞬止まった。

目の奥で何かが過ぎった。見極める間もなく、次の瞬間には完璧な微笑みに覆われた。

表情を整え、ちょうどよい心配の色を浮かべて近づいてくる。

「朔、怪我をしたって聞いたわ。私に何かできることはある?」

口調は自然で、まるで自分こそがこの部屋に属する人間であるかのようだった。祈など存在しないかのように。

それから視線を祈に向けた。微笑みは変わらないが、声のトーンが半...

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